高血圧の方の生活習慣治療
高血圧の方の生活習慣治療

高血圧に関するガイドラインが2025年に改訂されています。高血圧治療という表記から高血圧管理・治療という表記に変更されており、治療の前段階を含めた血圧管理(健診・保健指導・生活習慣改善・家庭血圧など)を重視する方針が明示されています。薬さえ飲んでいれば良いという診療から更に一歩踏み込んだ高血圧管理。みなさんが普段から心がけておく方が良いこと、目標などをかいつまんでお示ししようと思います。
降圧目標を明確にするため、降圧目標を原則一律130/80mmHg未満としています。分かりやすくすることによって血圧を下げる行動につなげることが目的ということです。分かりやすい目標設定によって、生活習慣への介入と薬物治療を早期から行えるようになります。
具体的には、基礎疾患、合併症の有無による微調整というような複雑なことを考える必要がなくなります。例えば脳卒中の既往があったり、心不全があったり、慢性腎障害があったり、糖尿病があったりしても、一律に130/80mmHg未満の血圧管理が推奨され分かりやすくなっています。ただし、低血圧による何らかの自覚症状や、腎障害の悪化などがある場合には、個々の調整が必要になりますので、主治医との相談が必要です。
血圧の目標値を示されましたが、これはどういう条件で測定した血圧についてでしょうか。これについても家庭での血圧を指標として治療を行うように強く推奨されています。それに伴って、デジタル技術やアプリなどでの管理の有用性についても触れられています。
ちなみに、家庭血圧での目標値は本当のところ125/75mmHg未満となっています。
心血管・腎リスクにより、低リスク群は生活習慣改善を基本とすること、中等度〜高リスク群・合併症のある群では生活習慣の改善と並行して初期から薬物療法を行い、目標が達成できない時は早期に併用療法へステップアップすることとされ、高血圧の程度によらず、当然のことではありますが、生活習慣に対する介入が最も基本的で重要と位置づけられています。
減塩、体重管理、節酒、運動などの生活習慣改善は依然として治療の基盤とされています。 すでにご存知の方が多いと思いますが、減塩するに当たっての目標塩分摂取量は1日6g未満です。個人の工夫だけではなかなか分かりにくいところがあると思いますが、減塩食品について紹介している書籍やウェブサイトが多く出されていますので、参考にされることをおすすめします。
同時に塩分制限した時に不足しがちなカリウムの摂取維持を推奨されています。カリウム摂取には、野菜350g、果物200g、牛乳や緑茶などの摂取を1日あたりに勧められています。
体重管理については、目安として1kgの減量で1mmHgの血圧低下が見込めるということを参考にしていただきますが、日本人の場合、肥満に該当する方は、まず3%の体重減少を目標にするよう勧められています。肥満が万病の元になることは以前の記事で記載させていただきましたが、高血圧に限った問題ではありませんので、ぜひとも改善したい部分です。
運動療法としては、これまで有酸素運動の有効性が長らく言われて来ました。血圧に関しては2~5mmHg程度の降圧効果があるとされています。肥満の改善と同じく、高血圧に対する効果だけでなく、血糖や脂質の改善にもつながる非常に重要なポイントです。有酸素運動はウォーキングやランニング、自転車などが該当しますが、レジスタンス運動も有効であることが分かっています。こちらもよくご存知の運動項目になりますが、スクワットや腕立て伏せがそれに該当します。個々に可能な負荷を確認しながら、目標に合わせて運動療法を組み合わせていきます。
その他に、血圧上昇に繋がってしまう因子として、寒冷、便秘、睡眠不足などがあります。現代社会で睡眠時間をコントロールすることは困難な場合が多いとは思いますが、目標は7時間とされています。寒冷に伴い冬は血圧が上がりやすく注意が必要ですので、薬物治療の調整が必要なこともありますが、暖かくして過ごせる工夫が望まれます。特に入浴時の急激な変化から急変される方の話も聞かれたことがあると思いますが、注意が必要になります。
近年はスマートフォンやウェアラブルデバイスなどの進歩が著しく、非常に便利になっていますが、血圧計もワイヤレスでスマートフォンに記録されていくようなものがどんどん発売されています。肥満解消に関して言えば、毎日体重計に乗るだけで少し減量できる人がいると言われていることをご存知の方も多いと思いますが、やはり自分がどのような状態かを知るということがまずは重要で、それによって自然と節制の行動につながるものと推測されます。血圧管理に関しても、特にワイヤレスでの血圧の記録が降圧効果が高かったことが示されています。記録すること自体に手間がかかるとどうしてもハードルが高くなってしまうのだと思いますが、血圧を簡単に記録できるようにする方法の一つとして、是非一度検討していただきたい工夫点と思われます。
血圧の記録だけで血圧管理が十分というわけではありません。前述の通り、食事や運動など、生活習慣の中でしたほうが良い工夫は色々あります。分かってはいるけど、実際どのようなことをしたらいいか、十分に理解することは難しいという点も血圧管理の入口の難しさだと思います。この点に関しては、当クリニックのお知らせにも記載させていただいたことがありますが、現在では血圧管理をサポートするアプリがあります。毎日血圧を入力し、それに合わせて必要な指導、アドバイスをしてくれるアプリです。今のところ半年間の治療期間で有意な降圧効果が認められ、保険承認されています。一度血圧管理に必要な生活習慣を身につけていただき、以降はご自身で継続いただくという、生活習慣病に対して非常に理にかなった、最も基礎的な治療法と思います。
あまり言いたくない話ですが、医療費の削減が国の方針としてあることが感じ取れる中で、薬物治療を必要なだけ増やしていける状況がどこまで継続可能なのか、心配してしまうところもあります。
どの疾患でもそうだと思いますが、病気になる前の段階での対応、予防が更に重要になってくるのではないでしょうか。今回のガイドラインの改訂も、そのような考え方を示されているものと思っています。

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