
高齢者のワクチンについて
高齢者のワクチンについて
ワクチン接種について迷われている方からご相談を受けることが多いので、簡単に整理しておこうと思います。
流行状況によって推奨が変わることもあるかもしれませんが、現状では季節性のワクチンとして、インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンがまず思い浮かぶと思いますし、かなりたくさんの方が接種経験があるものと思います。
いずれも65歳以上の高齢の方や、60歳から64歳までの基礎疾患がある方には毎年1回の接種が推奨されています。その効果は高齢者に対するインフルエンザワクチンの場合、40%前後の発症予防効果や30%程度の死亡リスク減少、新型コロナワクチンの場合、入院を40%ほど予防(海外では70%程度)ということになっています。
最近定期接種が始まったので注目されているワクチンとしては帯状疱疹ワクチンがあると思います。季節性以外のワクチンという括りでは、他に、肺炎球菌ワクチン、RSウイルスワクチンがあります。
肺炎球菌ワクチンは季節性ワクチンと同様に65歳以上の高齢の方か、60歳から64歳で基礎疾患のある方に対して推奨されており、効果は肺炎の発症をおよそ30%程度、菌血症の状態を40%前後ほど予防できるという結果です。
種類が複数ありますが、従来のポリサッカライドワクチン(=ニューモバックス®)の5年間隔の接種から、コンジュゲートワクチン(=プレベナー®)の1回接種に移行しつつありますが、費用的な補助の有無に違いがある点に注意が必要です。
65歳のポリサッカライドワクチンは定期接種で補助されますが、5年間隔で8,000円程度の任意接種を繰り返すことになりますと、平均寿命までに4回程度接種することになりますので、合計30,000円以上の費用が必要なことになります。コンジュゲートワクチンは10,000円を超え、補助もされませんが、現時点では1回きりの接種です。
呼吸器系という順番で説明しますと、次はRSウイルスワクチンです。こちらは60歳以上の高齢の方か、50歳以上のリスクの高い方に推奨されています。RSウイルスといえば小児の感染症のイメージが強かったですが、新型コロナウイルスの流行を機に、ウイルスに関する検査が進歩し、成人でも呼吸器感染の原因として比較的多いことが分かりましたし、高齢者やCOPDなどの基礎疾患がある方では、重症化の原因になることが分かりました。
ワクチンの接種による効果は、大まかにいいますと、発症や重症化リスク、入院などをおよそ80%程度は予防できるということです。まだ新しいワクチンですので持続期間についてはまだまだこれからデータが集まってくる予定ですが、現時点では3年経過してもまずまずの効果を保っているということになっています。こちらは費用の補助はなく、20,000円以上かかる任意接種ですが、現時点では一生に一度きりの接種になります。
最後に、今注目されている帯状疱疹ワクチンについてお話します。定期接種の案内が届くようになって、ワクチンについて迷われている方が増えるきっかけになっている印象です。
65歳以上、5歳間隔で案内されており、肺炎球菌ワクチンの時と同様に、今後は65歳の時の定期接種になっていく予定です。2種類のワクチンがあり悩まれると思いますが、生ワクチンと組み換えワクチンの違いを掻い摘んでご説明しますと、1回接種か2回接種か、効果の持続時間が比較的短いか長いか、費用が安いか高いかになります。組み換えワクチンは5年後も9割方の予防効果が残るとされており、2回接種であったり、助成されていても1回10,000円ぐらいであったりと接種時の負担はやや大きいと思いますが、ワクチンの副反応に対する心配が比較的少ないお元気な方には十分な予防効果を期待して組み換えワクチンをお勧めすることになります。
神戸市に限っていいますと、50歳から60歳の方には4,000円の補助が1回だけありますので、定期接種以外のタイミングでのご利用が可能です。
ワクチンの普及に伴って、流行するウイルスや細菌の種類に変化が起こりますので、次に抑えないといけない病原体の種類が段々と変化していきます。その時に合わせたワクチンの開発と定期接種化が考えられますので、将来的にはまた推奨されるワクチンも変化していくことになります。しかし、これは、現在のワクチンを接種することに意味がないというわけではなく、現時点で必要なワクチンは接種した上で、更に次の段階に備えるという戦略であることを知っておく必要があります。人間の事をコンピューターに例えるのは適切でないかもしれませんが、時代に合わせたアップデートをしておかないと、過去の微生物に対する準備もできていないということでは、今後も続いていく微生物との戦いに置いていかれることになってしまいます。副反応に対する不安もあると思いますが、今一度見直していってもらえると良いと思います。
ワクチンの種類 | 対象 | 接種回数 | 費用(神戸市) |
---|---|---|---|
インフルエンザ | 60~64歳(基礎疾患) 65歳以上 |
毎年1回 | 1,500円 |
新型コロナ | 3,000円 | ||
肺炎球菌 | 1回~5年毎 | 助成により4,000円 種類により10,000円以上 |
|
RSウイルス | 50歳以上(高リスク) 60歳以上 |
1回 | 20,000円以上 |
帯状疱疹 | 65歳以上 | 1回か 2ヶ月間隔で2回 |
助成により4,000円か 10,000円×2 |
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