
在宅酸素療法
在宅酸素療法
在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)とは、慢性的な呼吸不全を抱える患者さまが、自宅や外出先でも体内に必要な酸素を供給できるようにする治療法です。生命を維持する上で酸素はとても重要です。主に慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺線維症、心不全などの疾患によって体内の酸素が不足する場合に適用されます。体内の酸素が不足してしまうと、息切れや呼吸が上手にできない等の症状や、心臓に負担がかかってしまい、心不全に繋がってしまう場合があります。在宅で継続的に酸素を供給することで、日常生活の質を向上させ、呼吸困難の軽減や病気の進行を抑えることができます。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、慢性気管支炎や肺気腫などの病気の総称です。主な原因はタバコや加齢といわれています。気管支の炎症や肺の弾性の低下が起こり、呼吸をするときに酸素を失った空気が肺に残ることによって、酸素の多い新鮮な空気を吸い込むことができず息苦しいといった症状が長期にわたり続きます。歩行時や階段昇降など、身体を動かした時に息切れを感じる労作時呼吸困難や、慢性の咳や痰が特徴的な症状です。進行すると呼吸困難を起こし、日常生活に支障をきたします。重症化すると呼吸不全や全身に障害が現れたりすることもあります。早期に診断を受けて治療を開始すれば、呼吸機能の低下を食い止められ、健康な人と変わらない生活を続けることができます。少しでも軽症のうちに発見して治療をはじめることが重要といえます。
間質性肺炎とは、肺の「間質」と呼ばれる部分に炎症が生じ、肺が硬くなってしまう病気です。進行すると酸素を取り込む機能が低下し、息切れや乾いた咳が主な症状として現れます。原因は特定できない特発性や、膠原病(関節リウマチ、全身性強皮症など)や薬剤の影響、粉塵やアスベスト、化学物質の吸入によるものなどさまざまです。治療法は進行度によって異なりますが、薬物療法(抗炎症剤、免疫抑制剤、抗線維化薬、酸素療法)や生活習慣の改善、リハビリテーション等があります。進行が抑えられず、薬物療法が効果を示さない場合、肺移植が検討されることがあります。早期発見と適切な治療が、病状の進行を防ぐ鍵となります。症状を放置せず、早めに医師に相談し、適切な治療を受けることが大切です。
心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしていますが、心筋梗塞や心臓弁膜症、心筋炎など様々な心臓の病気によって、このポンプの働きに障害が生じ、色々な症状を引き起こしている状態をいいます。「急性心不全」と「慢性心不全」に分けられ、急性心不全は、短期間で激しい呼吸困難などの症状が現れることから、重症の場合、命を失う危険性が高くなります。一方、慢性心不全は、ちょっとした動作でも動悸や息切れがしたり、疲れやすくなったりします。咳や痰が止まらない、むくみが出るといった症状が現れることもあります。慢性心不全は生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病など)との関連性が高く、高齢になるほど発症する方が増えてくる傾向があります。
診断
医師が血液中の酸素濃度(動脈血酸素分圧PaO2)を測定し、酸素療法が必要かどうかを判断します。安静時PaO2が55mmHg以下、または運動時・睡眠時に著しく酸素が低下する場合、適用されます。
酸素濃縮器の設置
患者さまの生活環境に合わせ、自宅に酸素濃縮器が設置されます。酸素はチューブを通じて鼻カニューレやマスクを使用して吸入します。
使用方法の説明
酸素機器の使い方や注意点を説明します。適切な流量や使用時間を守ることが重要です。
定期的なフォローアップ
医師の診察や血中酸素濃度の測定を定期的に行い、患者さまの状況により治療の継続や酸素量の調整を行います。
在宅酸素療法を行うにあたり下記の注意点があります。
酸素は可燃性が高いため、火気の近くでは絶対に使用しないように注意が必要です。
酸素濃縮器や携帯用酸素ボンベは、医師の指示に従って適切に使用し、以下の点を守りましょう。
冒頭の説明の通り、在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)は、慢性呼吸不全を抱える患者さまに必要な酸素を供給する重要な治療法です。しかし残念ながら、疾患の慢性的な進行や加齢に伴い、慢性呼吸不全の状態は変化していくことがあります。必要な酸素の量が増えてくることをⅠ型呼吸不全と呼ぶのに対して、二酸化炭素が体内に溜まっていく状態をⅡ型呼吸不全と呼びます。この状態になると酸素を補うだけでは身体を維持することができません。患者さまが肺に吸い込んでから吐き出す気体の量を増やす必要があり、このような病状の方には、非侵襲的陽圧換気(NPPV:Non invasive positive pressure ventilation)というマスク型の人工呼吸器を指導させていただくことがあります。
その他、ご不明な点があればお気軽にご相談ください。
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