心不全という言葉はポピュラーでご存じの方も多いかも知れませんが、呼吸不全という言葉にはみなさんなじみが薄いでしょう。呼吸不全とは、肺を中心とする呼吸器系の臓器の様々な病気(肺気腫や肺結核後遺症、間質性肺炎などが代表的な病気です)により呼吸がうまくいかなくなる状態のことで、多くの場合酸素不足に陥ります。酸素不足が深刻な場合には、どんなお薬よりも効果があるのは酸素の吸入です。
酸素は苦しい時だけいわば頓服のように吸入しても目立った効果は望めません。このため、酸素濃縮器や液体酸素などを使用してご自宅で長時間吸入していただく方法をとります。これが在宅酸素療法で、決してそれほど特殊な治療ではありません。最近では、ボンベを引いて酸素を吸いながら町を闊歩する人の姿を見るのもそれほど珍しくはなくなりました。
また、酸素投与のみで不十分な重症の呼吸不全の患者さんに対して、人工呼吸療法をご家庭で行っていただく在宅人工呼吸療法もあります。従来、人工呼吸療法を行うには気管内挿管や気管切開などの負担の大きい処置が必要で、これにより会話や食事に困難を来すことがありましたが、最近のシリコンマスクを使用する方法ではこのような負担がなく、ご家庭での管理が格段に容易になりました。